出雲坂根は昔からの鉄道マニアのある種の憧れの地ではないだろうか。大規模な3段式スイッチバック。スイッチバック自体がどんどん姿を消している昨今ここもいつまであるか分からない。いつ廃止されてもおかしくない赤字路線。ある時に見ておこうと赴いた。

鉄道敷設の技術の進歩と車両性能の向上により、スイッチバックは必要がなくなった。しかし、その昔、国の発展の要は鉄道輸送だった頃、非力な蒸気機関車で険しい山をなんとか越えようと先人が苦労して建設した、ある面産業遺構と言える。なんとか残せないものかと思う。

スイッチバックは普通は駅から折り返し地点が見えているものだ。しかしここは折返しまで800mくらいあり、駅からは見えない。出雲坂根という駅は、すでに標高564mだが次の三井野原が726m、なんとひと駅でなんと162mの高低差を登る。

出雲坂根に着いたのは15:30、 季節柄さぞかし暑いだろうと思っていたが、さすがに標高564m。影に入ると風が涼しい。ひとつ列車を撮って、乗るべき列車まで2時間40分もある。30分歩いて道の駅まで行くつもりだったが、コミュニュティバスがあるのがわかり、それで先の出雲横田まで先回りワープすることに。

先回りしたことで出雲横田で食事ができ、駅で後から追いかけて来て到着した列車を撮っていると乗員交替で車両から降りてきた若い運転士に「こんにちは」と声を掛けられた。「どうやってここに来られたのですか???」と。

出雲坂根で撮影した備後落合行きを運転していたそうで、僕が撮影していたのを憶えていて、駅の駐車場に車はなかったし(列車から見える)折返しの列車には乗ってこなかったし、移動できないはずなのに「あの人がなんで今ここにいるんだろう?」と思ったと(笑)
コミュニティバスで先回りしたことを話したら「あ〜そんなのがあるんですか。出雲坂根で乗って来られなかったし、クルマもなかったし、なんでここにいるんだろう?おかしいなぁと思て、声を掛けさせていただきました(笑)」ととても感じの良い方だった。


<観光列車おろち号>
翌日に乗車した逆方向(備後落合行き)は、出雲坂根で観光列車の「おろち号」と離合するため、15分くらい先についておろち号が来たらすぐに発車する。おろち号カラーに塗られたDE10はなかなかステキだった。おろち号は老朽化のため2023年秋で終了するそうだ。